平成29年医療法改正についての概略【第六回】
第6回では、平成29年医療法改正についての概略をご紹介します。医療法は、昭和23年に制定されて以来、大きく7回の改正が行われてきました。今回の改正は、第8次改正となります。
第1次改正 (昭和61年) |
医療計画の導入 ⇒医療施設の量的整備が達成されたことを受けて、医療資源の地域的偏在の是正と医療施設の連携推進を目指す |
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第2次改正 (平成5年) |
特定機能病院及び療養型病床群の制度化 ⇒高齢化に伴い、患者の病状に応じた適切な医療の提供を目指す |
第3次改正 (平成10年) |
療養型病床群の設置、地域医療支援病院の制度化、インフォームド・コンセント法制化(努力義務)、総合病院の廃止 ⇒介護体制の整備、日常生活圏における医療提供、患者の立場に立った情報提供体制、医療機関の役割分担の明確化及び連携を目指す |
第4次改正 (平成13年) |
療養病床と一般病床の区分化、医療計画制度の見直し、医師の臨床研修必修化 ⇒良質な医療を効率的に提供する体制の確立のため、入院医療の提供体制整備等を図る |
第5次改正 (平成19年) |
新規法人設立を持分なし医療法人のみに限定、社会医療法人創設、広告規制緩和 ⇒質の高い医療サービスが適切に受けられる体制構築を目標とし、医療に関する情報提供の推進や、医療計画制度の見直し等を図る |
第6次改正 (平成26年) |
病床機能報告制度と地域医療構想の策定、認定医療法人制度創設、医療事故調査制度創設 ⇒「社会保障・税一体改革」に基づく患者の状態に適した良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の構築を目指す |
第7次改正 (平成27年) |
地域医療連携推進法人制度創設、医療法人制度の見直し ⇒地域医療・地域包括ケアの充実の推進による地方創生、及び医療法人経営の透明性確保とガバナンス強化による非営利性の確保を目指す |
第8次改正のポイントは、医療に関する広告規制の強化、持分なし医療法人移行計画認定制度の要件緩和、監督規定整備と検体検査の品質制度管理の整備の3点です。広告規制については第4回で触れましたので、今回は後者2点を取り上げます。
1.持分なし医療法人移行計画認定制度の要件緩和について
現在、新規で設立できる医療法人は持分なし医療法人のみです。持分とは、出資者たる社員が法人財産から持分割合に応じた分配を受けることができる権利のことで、非営利性の観点から第5次医療法改正において否定されました。しかし、第5次改正以前にあった持分あり医療法人については当分の間存続するという経過措置が採られ、10年近く経った現在でも8割近い医療法人が持分あり医療法人のままです(1)。
移行が進まない原因として、相続税法による取扱上贈与税が課税される可能性があることがあげられます(相続税法66条4項)。つまり、出資持分を放棄して、持分なし医療法人に移行した際、税務署から相続税及び贈与税を不当に減少させたと判断された場合には出資持分の時価相当額が課税されるおそれがあります。これを回避するための要件が定められていますが、非常にハードルの高いものでした(2)。
そこで、第8次改正では、これまで税務署が判断していた課税基準を厚生労働省に移管し、認定を受けた医療法人については相続税法66条4項の適用を排除することとしました。認定要件も大幅に緩和され、非同族基準や規模的要件が撤廃されました。また、これに伴い当初平成29年9月30日を期限としていた移行計画認定制度が3年間延長されました。
2.監督規定整備と検体検査の品質制度管理の整備
現行医療法では、医療法人が開設している医療機関以外への監督は限定されています。医療機関の開設主体は個人やその他の団体も行うことができますが、医療法は医療法人以外の医療機関の運営に対しては規制が及ばず、監督が行き届かないという不都合がありました。そこで、第8次医療法改正では、この点を改め、全ての医療機関への指導監督ができることとなりました。
【現行医療法における監督権限の範囲】
対医療法人 | 対個人その他団体 | |
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医療機関への立ち入り検査 | 〇 | 〇 |
開設者への立ち入り検査 | 〇 | × |
業務改善命令 | 〇 | △※ |
業務停止命令 | 〇 | △※ |
開設許可取消し | 〇 | 〇 |
閉鎖命令 | 〇 | 〇 |
※人員配置又は構造設備が不適切な場合
(1)厚生労働省「種類別医療法人数の年次推移」http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000172535.pdf
(2)非課税基準の主な要件として、理事6人、監事2人以上、役員の親族1/3以下、医療機関名の医療計画への記載、法人関係者に利益供与しないこと等が定められていた。